失敗かそれとも高度なユーモアか

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2014年11月、タイのCentral Investigation Bureau、つまり日本でいうと東京地検特捜部のような大規模かつ組織的な犯罪を調べるための機関のトップらが逮捕された。まあみんな忘れているだろうがタイは今、軍事政権なので、逮捕の理由は何とでもなるのだけれど、とりあえず汚職や国王侮辱などとなっている。

そのトップが実は古代カンボジア、ラオス、タイの50点以上の芸術品を隠し持っており、その価値は5000万バーツ(ざっくり1億5000万円)の価値があると伝えたのはタイ英字紙Nation。「50 priceless artefacts in Pongpat’s treasure trove」(2014年12月2日)と、まるでどこかのカード会社を真似たうえに、記事中で5000万バーツとしておきながらpricelessと見出しに書くのはないだろうと突っ込みどころ満載の記事ではあるが、その価値があるといっているのは日本でいうと文化庁長官なのだからまあこの時点の記事としてはこうだったのだろう。

で、国境にある世界遺産プレア・ビヒア(カオプラウィハーン)をめぐって争い、何かとギスギスしているカンボジアに対し、お宝を返却しますよというのが「Thailand to return some of Cambodia’s stolen treasures」(Coconuts Bangkok、2015年1月19日)のこと。(下の写真は2014年6月のもの)

そしたら1週間もたたない1月24日、「Thanks for returning totally fake ‘relics,’ Cambodia says」ときたもんだ。いわく、返却された5点は全部ニセモノ。カンボジア国立博物館長からは、「タイ側はなぜこれを本物と思ったのだろう」と訝しがられる始末。フランス極東学院の学者からも「新しいものだ」と言われていたし、そもそも「押収したお宝はほとんどはニセモノだったが、そのうち本物と考えられるもの16点を返還し、他の20点も返還を検討する」とタイ側はいっていたという。

オイオイ、「priceless」と鼻息が荒かったのはなんだったんだ。続報でしれっと前報の事実を修正するのが多すぎるタイメディアではあるけれど、これはちょっとひどすぎる。

ここで考えられることは以下のストーリー。

  1. タイ側は本当はニセモノと知っていたが、カンボジアをからかうために仰々しく返還した。
  2. タイ側はニセモノを見抜く力が本当はなく、カンボジアに鑑定を依頼するつもりで返還した。
  3. 本当は本物だったが、カンボジアがタイを貶めるためにニセモノと言い張っている。
  4. 本当に本物かニセモノかだれにも分からず、美術的・歴史的価値は別のだれかが決めている。
  5. タイもカンボジアも、お互いが望んでいるモノや反応を覆すことに至福を感じている。

さて、真実はいかに。ぎくしゃくした両国関係を考えれば、5で双方が楽しんでいるという図柄を想像したいところではある。

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