翼の折れたPrincess

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タイ警察の元幹部2人が王室に対する不敬罪(lese majeste)で2015年1月30日、有罪判決を受けた。少なくとも17人が逮捕されたという一大汚職事件に関連する判決だった。

Top Thai cops jailed in corruption case that toppled princess(AFP、2015年1月30日)

この17人の中に、皇太子妃の親族7人も含まれており、これを原因として2014年12月11日、皇太子は皇太子妃の王族としての称号を剥奪、離縁した。しかしAFP記事を読んでみても、今回の判決自体がいったいどうなっているのか、そしてそもそも、汚職なのに不敬罪とはどういうことか、さっぱり明らかにされない。

しかしそこはAFPとしても必死の抵抗を示している。記事では、

Both Thai and international media must heavily self-censor when covering the country’s lese majeste rules. Even repeating details of the charges could mean breaking the law under section 112.

ざっくり訳。タイや国外のメディアも、タイの不敬罪について書くときは極めて自重しなければならない。(不敬罪の)容疑の詳細を報じることすら不敬罪となってしまうからだ。

つまり、たとえ容疑の詳細やなぜ彼らが有罪になったのかを知っていたとしても、それを報じてしまえば記者自らも不敬罪を犯したことになり、国外退去となる恐れがある。従って、そういう詳細は書けないから、代わりに書けない理由を書いて、読み手に事情を察知させる手法だ。

こうしたスタイルは本来、新聞が書くべきなのだが、日本の新聞はなぜか断片的な情報をかなり遅く、しかも何度も何度も同じことばかりを繰り返すだけで、少し頭を使ったこのような記事はほとんど見ない。

美しいPrincess Srirasmiがどうしてこのような落日を迎えたのか。それを示唆する記事を書いているのは、やはり新聞ではなくBBC、つまりテレビだった。

What’s behind the downfall of Thailand’s Princess Srirasmi?(BBC、2014年12月1日)

皇太子は2番目の結婚で4人の息子をもうけた。Srirasmi妃と結婚するために離婚し、今は彼らは米国に住んでいる。しかし、王族としての称号を使うことは認めている。同じことは今回のSrirasmi妃にもいえ、国王から与えられた名は剥奪されたが、尊称Momを使うことは許しており、おそらく妃との間にできた男児も同様と考えられている。

さらにBBCは、

It is widely believed that the crown prince may have had another baby boy this year with his current mistress, who is likely to become his next wife.

とも記している。これが離縁の直接の理由とも読める記述だ。つまり、歴史は繰り返したということか。

タイは政治がよく混乱するが、はっきりいって一般庶民の暮らしや観光客の行動にはほとんど影響がない。しかし、王室にひとたび混乱が発生すれば、政治的なクーデターとは比較にならない影響がでるとみられている。その意味で、メディアが、そして「読み手」が真剣に追いかける対象は軍や政治家ではないということも言える。

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2件のコメント

  1. タイの英字紙Nationが続報を書いている。
    Brother of former princess charged with lese majeste(Nation、2015年2月1日)
    記事によると、Srirasmiの弟も不敬罪で告発された。
    容疑内容は、「(バンコク南西部)Samut Sakhon県の住民から、県内を石炭を積んで走ったとして抗議された」ものだが、これがなぜ不敬罪に当たるのか、やはり詳述されない。Srirasmi本人はともかく、周辺を根こそぎ締め上げようとする一種の威圧なのか、それとも一族ぐるみで本当に犯罪を犯していたのか。

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