VoxとBussFeed、オバマ大統領と単独会見

口コミやシェアで閲覧数を伸ばす、いわゆる「バイラル・メディア」の雄、VoxとBuzzFeedがそれぞれ、オバマ大統領と単独会見した。というか、オバマがこの2メディアに、旧来メディア同等の重みづけを与えた。

Vox and BuzzFeed Obtain Interviews With Obama(New York Times、2015年2月8日)

Voxは、ワシントン・ポスト紙にいたEzra Kleinが2014年4月に始めた。インフォグラフィックをうまく使い、ニュースに「context」(脈絡、前後関係)を与えるのがうまい印象がある。Ezra Kleinは今回のインタビューで国内問題をオバマに質問している。その長大なtranscript(起こし)がこちら。一方の国際問題は、New York Times Magazineなどに書いていたMatthew Yglesiasが担当し、そのtranscriptはこちら。 インタビュー自体は1月に行われていたが、2月9日に記事が公開された。

一方のBuzzfeed。Huffington Postの共同設立者が2006年に始めたもので、当初はバイラルの実験扱いだったものの、昨年あたりから急にシリアス路線にも乗り出して来て、政治サイトPoliticoや調査報道でピュリッツアー賞もとったProPublicaなどから人材を引き抜いてきた。こちらは10日にインタビュー予定だ。

今回の出来事の意味は、NYT記事の言葉を借りれば、

The interviews are the latest indication that Vox and BuzzFeed News have emerged as serious news organizations, and are a further sign of the Obama administration’s efforts to connect with millennials and broaden its reach beyond traditional media outlets.

ざっくり訳。このインタビューによって、VoxとBuzzFeedがまじめなニュース媒体として立ち現れたことが示された。また、オバマ政権がミレニアルズ(1980年以降に生まれた若い世代)とつながり、旧来メディア以外にも伝達手段を拡大しようとする努力を示すものでもある。

ということになる。新興メディア勃興と、それを利用したいオバマ政権の思惑が交差したということだ。日本の状況にたとえるなら、単独会見が極めて難しい天皇が、スマートニュースに単独会見を許すようなものだ。

何とか大統領と単独会見しようとするのは、ワシントンで活動する記者が多大な努力と時間を割いている仕事でもある。中間選挙で負けた2期目のオバマなんてどうせレイムダックだ、2社へのインタビューでも新しいことは何も出ていない、などというやっかみの声がワシントンから聞こえてきそうだが、旧来メディアは見事にきれいすっぱりと抜き去られた出来事となった。

しかも、今回インタビューしているEzra Klein(写真左)は30歳、Matthew Yglesiasが33歳、BuzzFeedのBen Smith(写真右、右端)が今年39歳とみな若い。安倍や天皇はこれほど若い人から真剣にインタビューを受けるだろうか。安倍は真剣にこの世代にメッセージを届けようとしているだろうか。また、今の日本の30歳代が安倍にきちんと対峙できる姿勢と意気込みを持っているだろうか。

電車内はおろか、ホームを歩いている時でさえスマホゲームに顔をうずめ、情報は得ても情報の咀嚼はせずに2chに書き散らし、もしくはごくごく狭い範囲の世界しか見えないし見ようともしない若者に、この国を変える役割を負わせるのは、無理なだけでなく酷なのかもしれない。

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