中国の強欲、カンボジアの森を破壊

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英国に本拠を置くNPOのGlobal Witnessが「THE COST OF LUXURY -Cambodia’s illegal trade in precious wood with China-」(PDF)を公開した。副題にある通り、カンボジアの森が破壊され、木材が中国に違法に売られていることを告発する内容だ。

全32ページある報告を読み切るのは骨が折れるが、数々の図表や写真をまずは眺めるだけでもよい。加えて冒頭のExecutive Summaryのさらに冒頭のこの一句。

China’s craze for luxury rosewood Hongmu furniture has given rise
to a multi-million dollar timber smuggling operation in Cambodia.

ざっくり訳。中国が高級なローズウッド(紫檀)製家具を狂乱的に求めた結果、カンボジアでは数百万ドル(数億円)に上る違法な木材輸出が急増することになった。

「craze」という言葉が強烈だ。そしてその半狂乱について、カンボジア側の責を負わされているのが、 大物実業家「Oknha Try Pheap」という人物と、カンボジア政府の役人だ。

 

 

その部分を取り上げて少し詳しく報じた記事がこちら。

Group Names Tycoon as Destroyer of Cambodian Forests(VOA Khmer、2015年2月7日)

その中で、Global Witnessの担当者が、

the very officials in Cambodia who should be stopping them are conspiring to ensure that contraband wood enjoys safe passage and is exported as seemingly legitimate lumber.

The Try Pheap Group’s raids on Cambodia’s last forests are tantamount to daylight robbery.

ざっくり訳。本来なら(違法伐採を)止めるべきカンボジアの役人が(密輸側と)共謀して、違法木材を安全に輸送し、さも適法な木材として輸出されているかのように繕っている。

この企業グループによる森の収奪は、白昼強盗にも等しい。

と、「conspire」とか「daylight robbery」などという言葉を使ってかなり強い調子で責め立てている。

で、当然、カンボジア側は反発。

Claims by Global Witness rejected(Phnom Penh Post、2015年2月10日)

記事では農業相が「Global Witness does not understand our procedure. In reality, we have clear procedures for exporting timber without any conspiracy」と反論しているが、Global Witnessはカンボジア側役人もグルだと言っているのだから、「clear procedure」「without any conspiracy」というのも反論になっていない。

こうした顛末を報じた日本メディアはなし。唯一、日経がFinancial Timesの翻訳を申し訳程度に掲載しただけだった。しかもこのFT記事では、カンボジアだけでなくミャンマーやタイ、ラオスでの中国の「狂乱」ぶりも付け加えて、読み手に満足感を与える。日本メディアの感度の低さ、グローバルな視点の欠如は今に始まったことではないが、ここまで差を見せつけられると、つらい。

しかしそれは何も報道機関だけにとどまらない。Global Witnessの告発で有名なものに、シエラレオネなどでの「Blood Diamond」(1998年)があるが、これを敏感にとらえて映画にしたのが、ディカプリオ主演の同名映画(2006年)だった。金儲け主義などと批判されることの多いハリウッドだが、しかし中には、世界的な課題を娯楽作品に仕立て上げ、NPOが告発するだけよりももっと多くの人に問題の所在を伝えることを可能にする製作者や監督がいる。

翻って日本の映画はどうか。安直なキャスティングと企画、何の社会性もない脚本、監督のマスターベーションでしかない主題、ひねりも練り込みも深みも広がりもない作品。そんな映画を作り続ける邦画界の住人たちは実は、映画の本当の力を信じず、映画を好きでもなく、むしろ映画を貶めているのではないのか。

そんな映画に出て、やれテレビでの映画宣伝だ、舞台挨拶だ、レッドカーペットだと得意げな人たちは、自己欺瞞に嘔吐することはないのだろうか。そうやって自己を欺くことこそが俳優の生業なのだろうか。

カンボジアの紫檀。そこから思惟を広げるとこんなところにまで来てしまった。

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