調査報道を行うジャーナリストの国際団体、The The International Consortium of Investigative Journalists(ICIJ)は3日、政治家や犯罪者らによる租税回避の実態を示すという「The Panama Papers」の内容を公表した。
パナマの法律事務所から流出したというもので、1977年以来、約40年にわたるデータは、計2.6TBにもなり、ジュリアン・アサンジで勇名をはせたWikileaksの1.7GBをはるかに上回るもの。
あまりに巨大なので、そのざっくりしたまとめは、「The largest leak of secret documents in history was just released — here are its key findings」(Business Insider)でみていただくとして、「200か国・地域以上」にまたがる「140人以上の政治家・公人」の脱法行為というが、その主な人物を紹介する「Power Players」には日本からの人物はいない。近隣国では、中国の前首相の娘や、マレーシア首相の息子、カンボジアの司法相などが見える程度で、アジア的なインパクトはやや弱いと言わざるをえない。
もちろん、政治家だけではない。ICIJはサッカーのメッシがこれまで知られていなかったペーパーカンパニーを父親と共同でパナマに設立していたことが文書にあるとしている。メッシは現在、スペインで租税回避(脱税)の容疑で税務当局から告発されている。
アジアの目線で気になるとすれば、
They also include at least 33 people and companies blacklisted by the U.S. government because of evidence that they’d been involved in wrongdoing, such as doing business with Mexican drug lords, terrorist organizations like Hezbollah or rogue nations like North Korea and Iran.
(ざっくり訳)中には、アメリカ政府がブラックリストに載せた少なくとも33の人物・企業も含まれており、そうしたものはメキシコの麻薬王やヒズボラなどのテロ組織、北朝鮮やイランなどのならず者国家との不正に関与している証拠がある。
つまり、公には商行為ができない北朝鮮などと、このタックスヘイブンを使う形で取引していたと思われる人・企業も含まれているということだ。このあたりを日本の新聞が深堀りすれば、簡単にスクープになると思われるが、今の日本の新聞に、大量の英文資料を読み込んでそれを正確に分析し、ニュース価値を分かりやすく読者に提供できる力量はまず望めない。
かといって、最近好調の週刊文春にこのパナマ・ペーパーを扱うつもりもなかろう。硬派かつそこそこ影響力のある雑誌ももはやない。ではウェブメディアがそこまでできるかというと、相変わらず生活にはなんのインパクトもない皮相的な情報ばかりを流している「隙間時間」メディアには、そんなつもりもパワーも人的資源もなかろう。
であるならば、問題意識を持つ個人が自分で情報を得る努力をするしかない。ある意味、しんどい時代になったものだ。
ちなみにこのThe Panama Papers、どこにも書いてはいないが「The Pentagon Papers」を模しているのは間違いない。その時はNew York Timesにネタが持ち込まれた。今回は、ドイツのツァイトゥングとBBC、そしてWikileaksの時と同様、英ガーディアン。Wikileaksでは朝日も参戦したが、はて今回は?(4月6日追記)朝日は4日付朝刊1面と第2社会面で初報を打っていました。ICIJに参画しているとのこと。