フン・セン首相、さらなる続投を言明

カンボジアのフン・セン首相が4月29日、2018年に予定されている総選挙で勝ち、首相として5期目を担うと発言した。

Hun Sen to Seek Fifth Term as Cambodia’s Prime Minister(Radio Free Asia、2015年4月30日)

同日、シアヌークビルで行われた式典での発言だが、記事の見出しとは裏腹に、記事の内容はやや違っていて、フン・センを攻撃する野党・国家救国党のケム・ソッカ副党首への批判が発言の主体のようだ。

救国党のサム・リャンシー党首とはとりあえずの仲直りをした格好になっているが、副党首が「救国党が選挙で勝っても、(フン・センの)人民党へ報復はしない」と発言したことが癪に障ったようだ。

“I would like to send a message to [CNRP president] Sam Rainsy: Please advise the people in your internal party that if you cannot stop Kem Sokha from saying this, the dialogue of culture might be halted,” Hun Sen said. “It was born, but it also can die.”

ざっくり訳:サム・リャンシー(救国党党首)にはこう言いたい。党内の人物を指導してほしい。ケム・ソッカのこうした発言を止められないなら、(両党の)対話機運は沙汰やみになるだろうと。(対話機運は)生まれたものなのだから、死にもするのだ。

ケム・ソッカの発言で何がいけなかったのか理解はできないが、30年以上にわたり「首相」の肩書を持ち、並み居る政敵をすべて放逐してきた彼にとり、自分に挑戦しようというポーズを見せられるだけでも気に入らないのだろう。

そんな流れからか、

“Hun Sen is leading in the fifth mandate; Hun Sen will win in the sixth mandate,” he went on to say. “If I win, we will be safe. We will not have to run [from war].”

ざっくり訳:私は5期目を目指す筆頭だ。私は6期目も勝ち得る。私が勝てばカンボジアは安泰だ。戦乱から逃げなくてもいいのだ。

と、選挙演説、しかもかなりのアジり気味の言葉まで吐いている。RFAの記事はこの部分を見出しに取った。言葉の威勢はいいが、一方で彼がここまで言わなければならないほど追いつめられているという見方もできる。仮に取るに足らない相手であれば、「人民の皆様、どうかこれまでの実績を見てください」と言えばいいのだし、相手が弱小であれば無視することもできたはずだ。

躍起になって反論し、2018年どころか2023年以後の話までし、「おれが首相でなければ国は乱れる」と言い募る権力者の心には、その言葉の大きさと比例して失冠や衰えへの恐怖がある。

もちろん彼の言い分にも一分の真理はある。これまで長期政権だったがゆえに、野党には政権担当能力がほぼない。また、与党内でも彼に替わるような後継者の名前も出てこない。つまり彼がいなくなれば、カンボジア政治が不安定になること、もしくは不安定になる可能性が高いことは確かではある。

高度成長の続くカンボジアには日本企業も多く進出する。彼らはいずれ来る「フン・セン後」に備えているのだろうか。

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