モンタニャール40人、亡命申請へ

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ベトナム、カンボジア、ラオスという旧フランス植民地だった3国にまたがる山岳地帯。そこに住む少数民族はMontagnardと呼ばれる。彼らの40人がベトナム領からカンボジアのラタナキリへ逃れ、UNHCRの助けを得て亡命を申請しようとしている。

Montagnards await fate(Phnom Penh Post、2015年4月29日)

モンタニャール(山地少数民族)は日本ではほとんど報じられないが、先ごろ亡くなった船戸与一が「蝶舞う館 (集英社文庫)」で取り上げたから、もしかしたら少しは世に知られたかもしれない。

記事によると、カンボジアに逃れるモンタニャールはベトナムのザライ族とされ、2014年10月ごろから急増。カンボジア政府は2月に45人を送還しているが、13人が「仮」難民の資格を認定され、少なくとも23人がまだラタナキリの森の中に隠れているのだという。数が合わないがともかくUNHCRの報道官が、

more Montagnards have arrived in Phnom Penh … There are now 40 of them waiting to be registered by the Refugee Department.

ざっくり訳:さらに多くのモンタニャールがプノンペンに来つつある。カンボジア政府から難民認定されるのを待っているのは現在、40人いる。

と語ったこと、カンボジア政府が大規模な「違法入国」取り締まりを国境地帯で行っていること、隠れているモンタニャールを取り巻く環境が悪化していることなどが記事の趣旨だ。

彼らの多くはキリスト教徒。多数派民族の宗教に対抗する意味もあって欧米の宣教を受け入れたこともあり、欧米諸国による肩入れも大きい。この構図は実は、ミャンマー多数派のビルマ族と、同様に山岳民族でキリスト教の宣教を受け入れたカレン族などとの関係と同様だ。

せっかくキリスト教を受け入れたのに、もしくは受け入れたがために、多数派民族への対抗も融和もなかなかできず、かといって欧米諸国は、感化した民たちの苦境を看過し、今はベトナムやミャンマー、カンボジア各政府との経済的・政治的結びつきの強化に忙しい。少数民族にとっては、遠藤周作の「沈黙 (新潮文庫)」を現代に移した状況になっている。

2014年3月には、国連とカンボジア、ベトナムが事態打開の会合を開いたが、

“Unfortunately, dialogue with the government on these issues has not been possible in recent months. Any viable long-term solution, however, would need to be pursued on the other side of the border where developments are apparently causing persons to seek asylum.’’

ざっくり訳:残念ながら、(カンボジア)政府と本件についての話し合いはここ最近、まったくできない状況だ。また、根本的かつ長期的な解決策についてはベトナム側で確立すべきだ。ベトナム側での開発が明らかに少数民族を追い出しているからだ。

と国連側も半ば匙を投げるしかないのが現状だ。

企業ジャーナリズムというものがあるのだとしたら、ベトナム側、カンボジア側、国連、そしてラタナキリに潜む亡命希望のモンタニャールをそれぞれ組織的、立体的に取材し、問題の本質をあぶりだすような紙面を作れるはずなのだが、それを見ないということは、日本に企業ジャーナリズムというものはやはりなかったということなのだろうか。

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