タイで2010年に起きたいわゆる「赤シャツ弾圧」。タクシン元首相を支持する赤色がデモや街頭占拠を行っていたところついには治安部隊の鎮圧を受け、ロイターの日本人カメラマンを含む90人の死者を出した。
この時の首相が、タイ民主党のアピシット。総選挙で勝ってもいないのに、タクシン派政党が無体な解党命令を受けたためにタナボタで首相になっただけの人物だ。それが、赤シャツデモ弾圧の責任を認めたという。
Abhisit Formally Acknowledges 2010 Crackdown Charge(Khaosod、2015年3月15日)
治安部隊が暴力的なデモ鎮圧を行うのを許した「権力乱用」の容疑。間違っても殺人罪などではない。
このアピシット、どこか前原誠治に似ている。イギリス生まれ、オックスフォード大を出て細面。話す内容はともかく論じることだけは得意。肝心の内容は無に等しく、自分は有能と思っている、という点などが、京都大卒で民主党党首も務めたが政権は取れず、メール問題というお粗末な事件で結末を迎えたという前原と似ている。
それはともかく、「敵の敵は味方」として、反タクシンを唱えるタイ民主党は、軍部・支配階級(含む司法)と蜜月にあったと考えられていただけに、現暫定政府(=軍部)がアピシットと、当時の副首相ステープを訴追したというだけでも、タイ・ウォッチャーには驚きだった。
現暫定政府は現在、タクシンの妹インラックを「首相在任時に権力を乱用し、コメの買い取り制度を悪用した」とのかどで訴えている。だからアピシットが権力乱用で訴えられたということは、軍部がアピシットをインラック同様とみていることになるからだ。
憎しみのレベルからしても、インラックに対する訴追は過酷を極め、アピシットに対してはおそらく軽いものになるだろう。それでも、軍部がけんか両成敗に出たということは、味方だろうが何だろうが、ともかく政治家というものを根絶しようとしている表れなのかもしれない。
そういったことをバンコク駐在の記者が書いてくれればいいのだが。はかない願いか。