襲撃後初の発行でまたもやムハンマド

襲撃を受け12人が亡くなったフランスの週刊紙Charlie Hebdo。ちなみに本日のNHK9時のニュースでは、現地から報じたはずの大越アナが社名を間違っていて萎えた。

そのCharlie Hebdoが、襲撃後初のeditionを14日に発行する。これまでも「引き続き宗教を批判する」と言い続けてきたが、新号の表紙が明らかになった。日本のメディアはまず伝えないだろうから、ここでご紹介。

 

この表紙については、Voxの説明が詳しい。Defying killers, Charlie Hebdo puts Mohammed on its next cover

イスラム教の預言者ムハンマドが、一種の流行になった「I am Charlie」プラカードを持っていて、上には「all is forgiven」(すべて許される)と描かれている。よく見ると、題字のところには、「JOURNAL IRRESPONSABLE」(無責任編集みたいな意味か)とも書かれている。

言いたいことは、彼らを襲った2人が信奉するムハンマドも、実はCharlie Hebdo側だった、つまり襲撃者はムハンマドの意思に反している、ということなのだろうか。フランス人の「皮肉」「諧謔」はなかなか理解できないが、ムハンマドの絵を出すことを優先したあまり、結局何を言いたいのかよく分からなくなってしまった気がする。12人は、果たしてこんな軽い冗談のようなもののために死んだのだろうか。

一方、襲撃者が関係していたとされるISISに関係しているとされるハッカー(ええい、ややこしい)が、米軍CENTCOMのツイッターとYouTubeチャンネルを乗っ取り、ISISの映像やハッキングで得た情報とやらを表示した。

日本の大手メディアでは、こちらが若干詳しい。

アカウント乗っ取り:米中央軍「機密文書なし」 メディアは2段階認証の不備言及(毎日新聞)

ただ残念なことに、「一方」以後のパートで2段階認証の話に持って行ってしまい、「流出情報」がどんなものなのか、影響の範囲はどれくらいかといった本筋から離れてしまった。

AFPによれば、

 しかし米国防総省は今回のアカウント乗っ取りについて、インターネット上の「荒らし」程度の規模であり、軍の機密コンピューターネットワークへ侵入されたわけではないとして被害は大きくはなかったと強調。同省のスティーブン・ウォレン(Steven Warren)報道官は記者団に対し、「CENTCOMがハッキングを受けたのではない。ハッキング被害に遭ったのはツイッターだ」と述べた。

とのことなので、「被害は大きくない」というのはまあ常套句であることを割り引いても、「流出情報」が大したこともないのは推察できる。

これをきちんと報じたのはVox。

The real reason pro-ISIS hackers took over CENTCOM’s Twitterで、

So far, the hackers have given zero indication that they’ve managed to hack anything of real significance. In fact, a number of the things they tweeted on the hacked account and claimed to be classified military secrets weren’t even US military documents. One map of North Korea, which the hackers claimed was part of the military’s “Korean scenarios,” looks an awful lot like a Federation of American Scientists map — from 1997.

つまり、「流出情報」とされる例えば北朝鮮の地図は、米科学者連盟の地図にそっくり、という。結局、公開情報が利用されたに過ぎないということだ。ただ記事中、「それでもプロパガンダ的には勝利」とも評しており、まあCENTCOMがお粗末だったことは確かな様子。

このVoxが依拠しているのは、サイバーセキュリティの専門家のツイート。これもまた公開情報。他のメディアが報じているのをまとめるのではなく、公開されている他の情報を加えればVox並みの記事は書けたはずだが、先述の毎日新聞が使ったのは日本の「サイバーセキュリティーに詳しい独立行政法人・情報処理推進機構(IPA)」。ちょっとずれている。

ニュースはまず事実関係を伝える。テレビや多くの新聞ではここで止まっているのが現状。本来は、その次に、ニュース価値を判断するための材料を提供しなければならない。あくまで材料提供であって、判断する当体は読者や視聴者。そのための情報提供をきちんとするメディアが結局は信頼を勝ち得るのだと思う。

2件のコメント

  1. この記事で予想したのと少し違い、14日付朝刊では、日経、産経、東京が、中面ながら、「新号」の表紙を掲載。東京以外は、表紙に描かれていることを詳しく説明もしている。ドイツなどでは、Charlie Hebdoの絵を転載したメディアが襲われてもいたので、少なからず騒動を警戒するのかと思ったが、そこはやはり掲載しなければ読者も判断できないと判断したのだろう。少し安心した。

    一方、読売は2面の2段相当と記事自体が短く写真なし。情けないのは朝日で、「時時刻刻」という看板コーナーでありながら、しかも新号の説明もしながら、使っている写真はCharlie Hebdo本社前の花束。同じく毎日は1面に持ってきていながら、表紙の説明もしていながら、写真は同じく本社前の花束。ふだんは言論の自由にうるさい両紙が、新号表紙を掲載しなかったのは解せない。

    一方元気だったのはスポーツ紙。スポニチ、日刊、東京中日、サンスポ、デイリーと、大小の差こそあれ表紙を掲載した。していないのは報知ぐらいだった。

  2. 16日朝刊で、朝日と毎日、東京がなぜかそろって、「風刺画掲載 分かれた判断」(朝日)、「風刺画掲載 対応に差」(毎日)、「新聞各紙 割れる判断」(東京)と同じような記事を掲載した。朝日によると、ハフィントン・ポストは「米国本社が世界同時掲載を提案。米、仏、韓国など(13か国中)9か国が同調したが、日本はトップページでの掲載は見合わせた」とか。

    朝日は「特定の宗教や民族への侮辱を含む表現かどうか、などと踏まえて判断」、毎日は「『冒涜』ととらえるイスラム教徒が世界に多数いる以上、掲載については慎重な判断が求められる」と説明している。

    一方、掲載したうちの産経は「読者に判断してもらう材料として」、東京は「『表現の自由か宗教の冒涜か』と提起されている問題の判断材料を読者に提供しているため」としている。

    つまり、載せなかった方は、「見て傷つく人がいるかもしれない」と考え、載せた方は「そういう人がいるかもしれないが最終的な判断は読者が」と考えた。どちらが正しいのか、それこそ読者、視聴者の判断によるが、判断材料さえ提供しないのは読者を心底信頼していないような気持ちにさせられる。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です