タイには大使館に届けているだけでも5万8000人の日本人が長期滞在している。これはアメリカ(24万7000人)、中国(13万2000人)に次ぐ3位で、イギリス(5万人)、オーストラリア(3万6000人)、韓国、シンガポールより多い。
それほどに関係が深い両国だから、日本にいるタイ人も様々であることは容易に想像できる。たとえば京都大のPavin Chachavalpongpun准教授が書いた次のような記事がある。
Nothing will silence anti-coup Thais in Japan(Japan Times、2015年3月22日)
タイ軍事政権のプラユット暫定首相が3月、仙台で開かれた第3回国連防災世界会議に出席した際、在日タイ人が民主化を求めて抗議活動を行ったというシーンから記事は始まる。そして、2010年の騒乱の際、初めて犠牲になったメディア関係者がロイターの村本カメラマンだったことなどを強調。日本に住むタイ人が、主婦やレストラン経営など小規模事業主が多いことに触れた後、
In Japan, it is difficult to estimate the total number of anti-junta individuals. But what can be said is that some have gradually become politically active — even more active than Thais residing in Western countries.
ざっくり訳:軍事政権に反対するタイ人が何人日本に住んでいるかは分からない。しかし言えることは、そうした人々が徐々に政治的に活発化しており、欧米諸国に住むタイ人よりも活発なほどだ。
と指摘している。
ところが憲法改正や有事法制に熱心な安倍首相は、ドンパチが好きなのか、そんなプラユット暫定首相に意味あることは何も伝えず、要求もしていない。
Since Prayuth and his cohorts staged a coup on May 22 last year, an army of Western governments have echoed their concerns about the shrinking democratic space in Thailand. As a result, some, including the United States, the European Union and Australia, have imposed “soft sanctions” against the Thai junta. Other punitive measures include a travel ban against top leaders of the Thai military government. (中略)
Members of the anti-coup group in Japan have already submitted letters to the Japanese Foreign Ministry, seeking the Japanese government’s help in putting pressure on the Thai military regime. Their demands are clear: They want power returned to Thai voters and martial law to be abolished.
But with Prayuth visiting Japan twice in less than two months, anti-coup Thais are wondering if anyone in Japan has heard their pleas.
ざっくり訳:プラユットたちが2014年5月のクーデターを起こした後、欧米諸国は民主主義の余地が縮小することへの懸念を表明した。アメリカやEU、オーストラリアなどはタイ軍事政権に「ソフトな制裁」を課し、軍事政権首脳の渡航を禁じるなどした。(中略)
日本にいる反軍事政権メンバーは、日本の外務省に文書を出し、日本政府もタイ軍事政権に圧力をかけるよう求めた。彼らの要求は明確だ。主権をタイ有権者に戻し、戒厳令を撤廃するということだ。
しかし2か月に満たない間にプラユットは2回、日本を訪れた。軍事政権に反対する(在日)タイ人らは、日本は彼らの訴えを聞いてるのだろうかといぶかしんでいる。
安倍首相は、ことあるごとに威勢のいい言辞を吐く。しかし彼が実際にその言葉に忠実であったことも、実行したこともない。ドンパチや勇ましさが好きな彼は、むしろ日本人を犠牲にし、その後武力で実権を握ったプラユットにむしろ親しみを感じているのかもしれない。自分に実行力も決断力もないから、むしろ勇ましい言葉に自己陶酔するのかもしれない。そしてそれを攻撃もしないし、批判もしない野党とメディア。
「仙台で国連防災世界会議が開かれました」だけのニュースを見るにつけ、この国の浅薄さと皮相のひどさにえづくほどだ。いったい彼らは、何を見ているというのだろう。そしてそんなニュースを受け取っている一般人は何を知ったつもりでいるというのだろう。