中国、ミャンマーに敷設の石油パイプライン完成

中国がマラッカ海峡をバイパスするために建設していたミャンマーを通る石油パイプラインが完成し、1月28日から試験操業を始めた。29日にヤンゴンで行われた式典を報じた新華社をAFPが転電している。

China-Myanmar crude pipeline opens(AFP、2015年1月29日)

分かりやすい地図入りはChina Dailyの「Pipeline boosts energy security」(2015年1月29日)、無駄に写真が大きい新華社電(日本語)はこちら

このパイプラインは、中東から輸送される原油を、マラッカ海峡を通らずに中国に送るためのもの。なぜバイパスが必要かといえば、中国に輸入される原油の8割が通るマラッカ海峡は狭く混雑するうえ要所をシンガポール、フィリピン、台湾など親米国が押さえているという事情のほか、ベトナムやフィリピン、ブルネイ、マレーシアなどと領有権を争う南シナ海を通らねばならず、中国にとってはリスクが小さくないルートでもあった。「エネルギー安全保障」の観点からは死活的なプロジェクトだった。

ミャンマー軍事政権の時代に建設に合意、着手したものの、それ以後の政権交代でミャンマー側がそれほど積極的でなくなったという報道があったが、それは違ったようだ。771キロのパイプラインが今後、せっせと中国に原油を送ることになる。また天然ガスのパイプラインは13年9月に完成、稼働を始めている。

「ミャンマーは親日国」「アジア最後のフロンティア」などという、一面の事実しか見ない希望的観測記事も多いけれど、少なくとも自国の存続のために外交を行っている国は、多面的な外交を行っているという事実も知っておくべきだろう。

また、「安全保障」とか「セキュリティ」が好きらしい日本の現政権が、マラッカ以外の代替ルートを確保するとか、代替エネルギー源を開発するとかいった根本的な解決策を実現したということは寡聞にして知らない。この分野では、中国外交の勝利ともいえるだろう。

このパイプライン開通のニュースは、ISISの人質事件に隠れて日本ではほぼ報じられなかった。日経新聞本紙のほか、関連の経済紙も。隠された事実ならともかく、大々的に式典までやって新華社が報じているにもかかわらず。にわかに話題のトピックしか追わず、腰を据えた報道のできない小国。そんな国をかじ取りしている気分になっている男が、自ら招いた外交上の失敗に当惑する姿を見て、哀れみすら感じるようになってきた。

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