経済成長が著しいカンボジア。日本企業の進出も多いが、そのうちの一つの工場で、労働者が殴打されたとして、現地の新聞沙汰となった。
Union asks Japanese to examine ‘assaults’(Phnom Penh Post、2014年4月24日)
プノンペンの西、コンポンスプー州にある「ヒロタ」の縫製工場で、昨年12月の労働争議の際、組合に加盟する労働者が工場責任者から鉄パイプのようなもので殴られたとして、組合が日本大使館に介入を要請する手紙を23日に出した、という記事だ。
カンボジアに縫製工場を持っている「ヒロタ」社というと、岐阜市に本社がある「ヒロタ」だろうか。しかし、そのヒロタの会社ページには、海外拠点として中国の地名はあってもカンボジアがない。ただ、マイナビ上では、カンボジア進出をうたっている。また記事には、「Hirota spokesman Hui Xin」ともある。おそらく日本のヒロタが直接持っているのではなく、中国の子会社が所有する形になっている工場なのだろう。
労働組合が言う「assault」がどの程度のものか、またどういう状況だったのかは記事からはうかがい知ることができない。もしかすると大げさな主張なのかもしれない。
ただ、日本大使館も巻き込まれたのに、大使館のサイトトップには何の情報もない。都合のいいプレスリリースとお知らせが載っているだけだ。また、岐阜のヒロタは、取引先に「イトーヨーカ堂、イオン、しまむら、西友、ユニー、イズミヤ、平和堂、イズミ、丸井、伊勢丹、三越、高島屋、小田急百貨店、プランタン、東急百貨店、阪急阪神百貨店、ワールド、ジュン、三峰、ワコール、セシール」と掲げており、主要なデパートや百貨店などを網羅している。これほどまでに日本に関係した事件なのに、なぜかやはり日本では報じられていない。
仮に、中国人の工場支配人がカンボジア人を鉄パイプで殴ったとしたら、たとえばイトーヨーカ堂はこの工場で作られた服を売るのだろうか。そんなことを考えて記事を書くジャーナリストがこの国には一人もいないのだろうか。
そういった仕事をせず、目の前に流される情報を少しだけ加工して、ただ紙や電波やインターネットに横流ししているだけの仕事がジャーナリストと呼べるのであれば、東南アジアのニュースを勝手に解釈してサイトに載せている私だってジャーナリストになってしまう。ジャーナリストとは健全な猜疑心を持ち、政治権力を監視するのが役割のはずだ。その権力に嬉々として追従し、疑義を呈することを忘れたならば、それは単なる傍観者でしかない。