ミャンマー、WaPoならこう論じる

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どの新聞にも社説というコーナーがある。アメリカの新聞ならEditorialがある。日米の新聞の成り立ちが違うため、一概に同じものとは言えないが、それでもその新聞の公式見解を伝えようとする機能は変わらない。そう、機能は変わらないのだが、質にはずいぶんと違いがある。

ミャンマーに関して、このような論説があった。

A failing engagement with Burma(Washington Post、2015年3月14日)

ざっくりまとめると、オバマ大統領は敵対的な国であってもengage(関与)政策を取り、特にミャンマーについて、「体制変換しなくても国は変えられる」として、北朝鮮のモデルになりうると喧伝してきた。しかしオバマ自身が示した「5つのテスト」や「自由と安全についての基本問題」でも今のミャンマーはテストをパスしていない。そう概説したうえで、

Having rushed to lift sanctions as part of his engagement strategy, Mr. Obama now lacks leverage. The administration watches passively as the regime does the opposite of what the president called for. It’s a humiliating spectacle — and one that should give pause to those who believe that Mr. Obama’s variety of “engagement” will get results with other dictatorships.

ざっくり訳:関与政策のしるしとして、制裁を慌てて解いたため、オバマに残された手立てはない。オバマが求めたこととは反対の行動をミャンマー政府がとるのを、オバマ政権はなすすべなく見つめるだけだ。なんという恥ずかしい状況だろう。こんなことがあれば、オバマが言う「関与」が他の独裁政権にも効果があると信じする者にすら躊躇する気持ちを起こさせるだろう。

ワシントン・ポスト(WaPo)が共和党寄りであることを差し引いて考えても、オバマにとっては痛い的確な指摘といえるだろう。

 

一方、日本の新聞の「社説」はどうか。新聞としてのスタンスを示すこともあるけれど、たいていはその問題のまとめ記事にしかならないものが多い。「許せない」「暴挙だ」「当然だ」などという意見表明はあるが、事実の羅列が圧倒的に多いため、単調で深みがない。「なるほど」もなければ、「そうではないんじゃないか」もない。ミャンマー問題ひとつとっても、概説の域を超えない日本の新聞の社説を見たことがない。それはどの社でも。

学校によっては、朝日新聞の社説をありがたがり、生徒に筆写させるところもあるとか、ないとか。こんな内容をひたすら書かされる生徒はかわいそうだ。

それならむしろ、Washington PostのEditorialを読ませたほうがよっぽど思考力のある人間に育つ可能性があるのではないか。日本の新聞で社説が一番視聴率の低いコーナーと言われ続けるゆえんは、やはり知的興奮が少ないことが最大の要因だろう。

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