バンコクのMBK(マーブンクロン)に、日本のマンガやアニメグッズを売る「アニメイト」が6日、オープンした。NAAが報じている。
日本漫画店「アニメイト」開業、初日6千人来店(2016年2月8日)
想定以上の客が訪問し、まず出だしとしては好調なのだろう。それを報じる記事はいいのだけれど、店そのものにはツッコミどころも多い。
たとえば、この店は、
日本の出版大手など5社が共同出資したジャパン・マンガ・アライアンス(JMA)の海外1号店
なのだとか。そのJMAとは、リリース(PDF、2015年9月1日)によると、アニメイトが音頭を取り、KADOKAWA、講談社、集英社、小学館の計5社で共同設立したもの。すでに現地語版や日本語版も含め、多くのタイトルが流通している現状で「なぜ今更」感が強いが、JMA設立を報じたITメディアの記事によると、
店舗では、会員登録時に「海賊版に反対する」という項目を設け、チェックを入れてもらうなど、草の根でファンの意識に訴える。出版各社と連携し、単独ではリスクを取りにくい海賊版撲滅に向けた具体的な活動を検討していく。
のが目的らしい。つまり、コンテンツホルダーとして海賊版横行は許せん、いっそ公式に乗り出してやるといったところか。
もちろん、コンテンツホルダーとしては著作権を守ろうという意識になるのは当然だが、ではなぜ海賊版がはびこる現状となっているのか、も考えた方がいいだろう。あなたが途上国の国民で、日本語を解しないと想定すればよい。ファンなら当然、「真正」ものがほしいが、高いうえに理解不能の言語で書かれている。その傍らに、あなたが理解可能な言語で書かれ、手ごろな価格のバージョンがあれば、まずは内容を十全に理解したいあなた、どちらの本を手に入れるだろうか。
無論、海賊版を奨励するわけではない。なくなればいい方がいいに決まっている。しかし、ユーザの需要をまったく理解せず、それに応えもしなかった側にも、反省すべき点はあるのではないか。
それなのに、タイのアニメイトでは、
書籍はタイ語と日本語が2対1の比率で、価格はタイ語が45~60バーツ(約150~200円)、日本語が日本の1.5倍。
という。「真正」の「NARUTO」第1巻は定価421円。1.5倍とすると、約630円(約200バーツ)。タイ語版の3倍以上の値段になる。
バンコクで真正版を購入すると日本の1.5倍払わなければならない。せっかく版元がからんでいる事業なのに、むしろ日本の半額、せめて同額で売ろうというロジックはなかったのか。
逆に、再販制度のないタイで売る日本語書籍なのだから、日本の半値、つまりタイ語版と同程度の値段で売れば、タイ語版と同時購入する客が増えるとは考えなかったか。
日本のマンガ出版界が、「クール・ジャパン」なる官僚の掛け声で踊っているだけで、実は読者のことをまるで考えていないとしたら、JMAビジネスの先行きは暗いのではないか。