オーストラリアの不都合な真実

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普段英語のニュースに慣れている人も米英が中心で、オーストラリアについてはあまり触れていないと思われるのでご紹介。

Cambodia asylum deal receives support from International Organization for Migration(豪ABC、20日)

この記事を理解するには、前段の知識が必要だろう。

豪州には難民・移民が船で多く押し寄せてきた。近くはミャンマーやスリランカ、遠くはイランなど中東からも来るという。そういった人たちを豪州政府はできるだけ本土から遠いところで押しとどめるばかりか、押しとどめるためにインドネシア領海を侵犯してインドネシアから抗議をうけることもたびたび。さらにはほとんどを受け入れしてこなかった。難民申請を審査する拠点(収容所とも)をナウルとパプアニューギニアに建ててそうした人々を「隔離」。その施設の環境の劣悪さがたびたび指摘されてきた。

難民に国土を踏ませないオーストラリア(アムネスティ日本、2014年8月13日)

命からがらやって来たのにほとんどは難民申請を断られ、出発国に送り返されるか、ナウル・パプアニューギニアで定住するかしかなかったが、豪州とカンボジアは2014年9月、定住先としてカンボジアも加えることに合意。今回、国際移住機関(IOM)がそれにお墨付きを与えたため、実現に一歩近づいた、というのがABCの報道となっている。この合意で、住居建設やカンボジア語習得のためのクラス運営などとして、豪州がカンボジアに4000万豪ドル(約40億円)を供与することになっている。いわば増え続ける移民希望者を何とかするため、豪州がカネで「定住先に手を挙げる国」を募ったという見方ができる。ただこの「合意」は、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)などから批判されている。

カンボジア側からの報道はこちら。Nauru hosts gov’t officials(The Phnom Penh Post、1月13日)

豪州の対難民政策に関する包括的な記事はAustralia’s Troubling Asylum Seeker Policy(The Diplomat、2014年2月18日)。

「白豪主義」など昔のことだと思っていたが、どうやら日本と同様、よりよき地を求める人たちにはあまり優しくない国のようだ。こうしたことを知ると、「コアラとカンガルーの国」「グレートバリアリーフ」 といったテレビや旅行パンフレットには出てこない別の顔も垣間見えるようになる。

自由でおおらかそうな国を目指したのに、言葉も風習も生活もまったく違うカンボジアに行く人はそう多くないだろう。ただ、出発国には戻されたくないとの一心で、カンボジアに向かう人がいるとすれば、そういう人たちこそマスメディアは取材すべきだが、日本の新聞の豪州取材は通り一遍で、このカンボジアとの動きを報じていない。

ただ、少し自分でアンテナを張れば、新聞やテレビをただ受け取っているだけの人よりも情報が取れるのが今の時代。要は、自分の心がけ次第ということだろうか。

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