アメリカ、北朝鮮、ミャンマー

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アメリカのミャンマー特使Joseph Yunが17日からミャンマーを訪問しており、事実上のミャンマートップ、アウン・サン・スー・チーに対し、ミサイル開発を続けている北朝鮮との軍事的な関係を解消するよう求めた。ロイターが「Exclusive」(独自材)として報じた。

Exclusive: US presses Myanmar to cease military ties with North Korea

日本の大手メディアでは、毎日新聞がロイター転電の共同通信記事を短く報じているだけ。それはなぜか。

真っ先に思い浮かぶのは、記事のどこにも「日本」が出てこないからといういつもの理由だ。もちろん、今回もそれは大いにあったはずだが、今回のケースでは、もっと根源的な問題があった。

それはこの記事自体の出来。

「独自材」(まあ、スクープとか特ダネの意味を多分に含む)とはうたっているものの、原稿自体はヨレヨレ。Yunがスー・チーや国軍司令官ミン・アウン・フラインに北朝鮮に関する要求を行ったということ自体は特ダネなのだろうが、当のミャンマー側は、

Myanmar insists that arms deals and other military relations with North Korea stopped before Myanmar’s transition to a nominally civilian government in 2011.

(ざっくり訳)ミャンマー側は、兵器購入など北との軍事関係は、ミャンマーが軍事政権から2011年に民政に移管する前にすでにストップしたと話している

とか、

 Kyaw Zeya, permanent secretary at Myanmar’s Ministry of Foreign Affairs, insisted Myanmar no longer had military ties with Pyongyang and was complying with UN resolutions banning such links.

(ざっくり訳)ミャンマー外務省次官のKayw Zeyaは、ミャンマーとしてはすでに北との軍事関係はなく、国連決議による(対北)制裁も順守していると主張している

ため、「アメリカは何ムリ言ってんだ」状態。

つまり、ロイターが真のスクープとするためには、ミャンマーが「もうない」といっている北との軍事関係を示す証拠(最悪、アメリカ国務省高官の証言)を示すしかないのだけれど、長文の記事を読んでみても、アメリカ政府高官はミャンマー側の主張を裏付ける話しかしていない。

これをたとえばニューヨーク・タイムズであれば、こうした「要請」しかなしえないトランプ政権の外交無力をあげつらう記事を書くだろうけど、建前はもう少し中立的な「通信社」ロイターとしてはそこまで記事を傾かせるわけにはいかなかったのだろう。

こうした、記事の弱さ、説得力のなさ、論拠の乏しさもあって、日本のメディアが追いかけなかったのには一定の理解はできる。

しかし、東南アジアを拠点として、北の動きを警戒している記者であれば、Yunのミャンマー入りの機会を捉えてここぞとばかりに角度のある記事が書けたはず。そうしたトライをしないメディアと、弱かったけれどまずは記事を公開したロイター。どちらが「ジャーナリズム」を体現しようとしているのか、それは明らかだろう。

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