ミャンマーが軍事政権だった時代、軍幹部とよろしくやって稼ぎまくっていたという政商Tay Za。彼が、中部のマンダレー管区のOhn-dan villageで、地元の人から約5.6キログラムのウラン鉱石を購入したと、19日にヤンゴンの自宅で開いた記者会見で明らかにした。
独立系メディア「イラワディ」が報じている。
Burmese Tycoon Tay Za Claims Uranium Unearthed in Burma(1月20日)
記事によると、マンダレーから北東に車で3時間の村で住民が「知らない鉱物」といっているものを買い受け、それを「中国人の専門家2人に見てもらい」、「3〜4日前にミャンマー政府機関に引き渡した」のだという。「バングラデュのような国に挑発されているから、その鉱物を国の安全保障のために使って欲しいと思っている」のだとか。「放射能で健康被害を受けた」けれども、「今後、村近くにウラン鉱脈があるか調べる」とも。
このニュースを見てまず感じたのが時代の流れ。つい5年ほど前までは、イラワディ紙がヤンゴンを発信地として記事を書くなど考えられなかった。このメディアは民主派であり、タイとの国境地帯やタイのチェンマイ、チェンライなどといった地点からミャンマー内部の話を書くのが常だった。2011年に政権が代わり、イラワディも普通にヤンゴンで取材できるようになったということだろう。
次にTay Za。これも5年ほど前までは「謎の政商」と言われ、メディアの前に姿を現すことも、ましてや自分からのこのこ「自宅で」記者会見を開くなど考えもつかなかった。これまた隔世の感がある。
そしてウラン。まあ単なる石ころである可能性も大いにあるが、ミャンマーはもともと地下資源に恵まれていて、ルビーなどは特に有名。軍事政権時代でも年数回、大規模なルビー市場を開いて、中国やインド、シンガポールなどからバイヤーが来ていた。ウランもあるという調査結果もあったと記憶している。たとえば三井物産もこう(PDF)レポートしている。
さらにいえば、各国との関係がなかなか厳しかった折、北朝鮮がミャンマーの核開発を支援していたという「疑惑」がくすぶっていた。ロイターは「焦点:ミャンマー、北朝鮮の支援で「核クラブ」入りの真偽は」(2009年 08月 13日 )という記事を残しているし、軍事政権に弾圧され外国に逃れた亡命者からは、「ミャンマーと北朝鮮の核協力」(2009年08月04日)という話は繰り返し出ていた。
まあ実験炉程度のものであれば、北朝鮮だろうがロシアだろうが、作ることはそれほど難しくはないのだろうが、Tay Zaの話の中で、いきなり中国人が出てきている点が興味を引く。現在のミャンマー政府は、自国の利益のためかつて多大な支援をしてくれた中国と、現在はやや距離を置いている。その中国が、ミャンマーの原子力開発という国益の中心のようなところに、本当に手を伸ばせているのだろうか。
イラワディの報道も、Tay Zaの話す内容には若干ネガティブな見方をしているが、仮に話が本当だとしたら、米国の経済制裁も受けていた彼のことを、米国はかなり本気で追跡しなければならなくなるだろう。