タイ裁判所、村本氏殺害の原因分からず

バンコク南部刑事裁判所は4月30日、2010年のバンコク騒乱の取材中に胸に銃弾を受け亡くなったロイター通信の日本人カメラマン村本博之氏(43歳)について、どの勢力が問題の銃弾を発射したのか分からないとする調査結果を発表した。

Thai court says unclear who killed Reuters cameraman(Reuters、2015年4月30日)

当事者だからか長く報じたロイター電になく、ライバルのAP電にあった部分を引用すると、裁判所は、

The court said “it was not known who committed the action” since it could not determine the type of weapon or bullet used.

ざっくり訳:裁判所は、どのような種類の武器や銃弾が使われたか分からないため、だれが銃撃したかを知ることができないとした。

ちょっと推理小説や映画を見たことがある人なら、「そんなわけないだろう」とツッコミを入れたくなる「調査結果」ではあるし、2012年5月から始めたという今回の調査が結局何ももたらさなかった無駄にも脱力するだろう。ただ、裁判所自体がタイでは政治エリートの一部であるという認識を持っていれば、意味のない期待だったとすぐに分かるだろう。

ロイター電は問題の銃弾が「a high velocity bullet」(発射速度が速い、つまり強力な銃弾)と書いて軍の関与をにおわせるが、しかし赤シャツ隊の中にも高度に武装した「暗殺部隊」がいたという報道もあり、果たしてこれだけではどちらが発砲したのか判別できないかもしれない。

2010年騒乱は、いわゆる赤シャツ隊と呼ばれたタクシン支持派の反政府デモに対し、政府・軍が暴力的に鎮圧した事件だ。今回の裁判所の発表は、村本氏と同じ4月10日に亡くなったタイ人2人も対象で、同様に「だれが撃ったか不明」の結果だった。

無内容の発表であったにもかかわらず、さすがに日本人がからんだニュースだったためか、日本の新聞・通信社も報じた。ただ、「なぜ裁判所が特定できなかったか」について踏み込んだ報道は当然なく、共同通信が「当時、プラユット首相が陸軍副司令官として取り締まりに関与した」という一文を入れて、行間を読ませる努力をしたのみだった。

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