タイの軍事政権が23日、タクシン派や学識者、学生運動家といった人々を集め、「対話」を行った。
Thai government holds talks with politicians, activists(Reuters、2015年4月23日)
「held reconciliation talks 」ではあるが、その会場がなんと2014年のクーデターを起こした場所といういわくつきの会場。そこでタクシンの妹インラックの閣僚に対し、最後通告と拘束を行った場所だ。
そこで「仲良くしましょう」という話をしても通じるはずがない。案の定、タクシン派は、現在軍事政権が準備を進めている憲法案について、国民投票にかけるべきだと話した。この憲法案は、これまで何回もクーデターを行ったり選挙無効としたりしてもタクシン派がのし上がってきたことを教訓に、「いかにタクシン派を抑えるか」が主眼となっている。選挙制度が小選挙区ではなく比例制なのも、首相が国会議員である必要がないのも、地方やマスの支援が根強いタクシン派の伸長を抑え、政治エリートがグリップをきかせ続けられるようにするための装置だ。
そしてこの場にのこのこと出てきたのが、記事では「conservative Democrat Party」と紹介されている民主党だ。民主党はタイの政党で最も歴史あるものだが、近年は民主の名に恥じることしかやっていない。タクシンを追い落とした2006年クーデターを称賛したのもそうなら、軍から指名を受けて嬉々として(選挙なしで)政権を握ったのもそうだ。
だから軍とは親密とみられていたが、現在の暫定政権からは冷遇もしくは冷淡な扱いを受けている。
こんな雑多な「暫定政権以外」の勢力を集めて対話をしたところで、何か生産的なものが生まれるわけがない。プラユットが内外の批判を受け、ガス抜きする場が必要になっただけだろう。
とはいえ、そんな場を設けなければならないほど、プラユットはある意味で追い詰められているとも言える。戦うことを知らずして成り上がった軍人は、はたしてこの緊張状態の連続に耐えられるのだろうか。