スイス国立銀行(中央銀行。日本でいう日銀)が15日、スイスフラン高に歯止めをかけるため設定していた1ユーロ=1.2スイスフランの上限を撤廃すると突如発表し、為替市場が大混乱となった。スイスフランは20分間で41%も急騰。これは日本円に直すと、1ドル=120円が20分で80円になったようなもの。
その混乱の様子をまとめているのが、
スイスショックでアルパリUKが破綻! スイスフラン大暴騰で損失をカバーできず(1月16日、ザイFX!)
「スイスフランショック」の余波世界に、為替業者が破綻(1月17日、ロイター)
英アルパリが破産申請、ニュージーランドのグローバル・ブローカーズNZが閉鎖。また米FXCMの顧客の損失は約2億2500万ドルに上ったため、自己資本に関する一部規制に抵触した可能性があると発表した。破綻が懸念されたが、3億ドルの融資を得てなんとか回避した。
このあたりまでは日本の新聞も切れ切れにではあるが報道している。テレビはあまりしていないけど、まあそれはそれとして。
ところが新聞の視点に欠けているのは「スイスショックが日本にとって何を意味するか」という点。これは日経もほとんど報じない。スイスフランの取引は日本では少ないとか、遠く欧州で起きたことだからとか、言い訳はいろいろあるのだろうが、
「スイスショック」から日本の投資家が学ぶべきこと(BLOGOS、内藤忍)
を読むと、日銀が現在行っている「異次元の緩和」「インフレ2%ターゲット」などがいかに人為的なものであり、その意味でスイス国立銀行となんら変わらないことが平易に説明されている。
さらに直裁に指摘しているのが、
9.11に匹敵する衝撃の「スイスショック」! 円相場がその二の舞となる可能性も!?(ザイFX!、陳満咲杜 )
記事では架空の黒田総裁まで登場させて、さらに日銀の、さらにいえばアベノミクスの無茶ぶりをあぶり出している。
つまりスイスショックは単なる対岸の火事ではなく、現在の日本にも起こりうる要素を秘めているということが分かる。起きた時にどうなるか。円安でなんとかうるおっている輸出企業の利益が40%、一気に吹っ飛び、それ以外の大した成果も出せていないアベノミクスという言葉は、口から出すのすらはばかれるほどに色を失うだろう。
本来、新聞の機能は、発生した情報に文脈を与え、歴史的経緯や意味を示して、今後の成り行きを読者があれこれ考えるという材料を提供するものだったはず。発生した断片的な情報を伝えるだけであれば、テレビやインターネットの速さにかなわないのだから、つまりは負け戦を自分からしていることになる。スイスショックが日本にとって、日本の消費者にとって何を意味するのか。それを伝えられなかった、もしくは伝えようとも考えなかった新聞は、もはや死に体なのかもしれない。