カンボジアで米国企業が進めていた母乳輸出について、カンボジア政府が差し止める決定を行った。
Cambodia halts Utah company’s export of human breast milk(AP, 2017/3/21)
モルモン教徒がユタ州に設立した「Ambrosia Labs」社が計画していたもので、母乳が必要な乳児のみならず、ボディビルダーなどに1オンス(約28グラム)4ドル(約450円)で販売する、というものだ。
カンボジア政府は、母親が母乳を売ることで、その子の栄養や成長に影響が出るのを懸念した。Ambrosia(神々の食物の意)社はすでに2週間前に母乳集めをやめていた。同社は、「養子縁組をした家族や母乳の出に問題がある母親に販売する」「子供が6か月以上になった母親から、余っている母乳を集めているだけ」としているが、多くがスラムに住むというその母親らに払っているのは1オンスあたり50セント。それでも「こうした母親らが縫製工場などで長時間、低賃金で働くより、当社が”仕事”を与えれば母親らは自宅にいて子どもの面倒を見られる」とまで言い放っている。
「日本でも液体ミルク解禁を」というニュースを見た際、その記事の中に、「海外では液体ミルクは当たり前」という記述もあった。つまり米国でも、液体ミルクは手に入るのだから、同社が言う米国の「養子縁組の家族や母乳の出に問題のある母親」向けという点はどうも怪しい。そういう人はカンボジアにもいるはずで、むしろカンボジア国内で流通させた方が、国の福祉にも役立つはず。
販売価格の高さから見ても、母乳に含まれるたんぱく質や希少成分目当ての人を当て込んでいると思われても仕方ないだろう。カンボジア政府が今回まともに機能したのがせめてもの救いだ。