君はモンサントを知っているか

モンサントと聞いて何らかの反応を示せる人は、世界についてある程度知っている人と言えるだろう。そういう意味で、リトマス紙になる会社名ともいえる。

世界保健機関WHOの専門機関・国際がん研究機関(IARC)は20日、モンサント社が製造する除草剤の主成分glyphosate(グリホサート)について「おそらく人体に発がん性がある(probably carcinogenic to humans)」と発表した(PDF)。

UN cancer agency sees a risk in Roundup and other pesticides(AFP、2015年3月20日)

IARCの発表は20日だが、それを短く報じた共同通信や時事通信はなぜか23日の配信だった。AFPなどの上の記事を読んでいたはずだが。他のメディアは報じず。

グリホサートなどと聞くと意味不明だが、除草剤「ラウンドアップ」と聞けば、テレビCMを覚えている人がいるかもしれない。この発表を受け、ラウンドアップを日本で販売する会社が24日、「弊社はグリホサートに発がん性は無いと判断しております」との発表文を出した。

おそらく今、新聞社で働いている人で「モンサント」という言葉に反応する人は少ないのかもしれない。しかし、「発がん性」に反応する人は少なくないはずだ。しかもこの除草剤が日本で販売されている以上、IARCの発表を受け、農水省や厚労省、モンサント、使っている農家や売っている店を取材して、問題提起する記事は書けるはずだ。

この「モンサント」は、PCBや、ベトナム戦争で使われた枯れ葉剤Agent Orangeを製造した会社だ。遺伝子組み換え作物の種では世界シェアが9割に及ぶという。枯れ葉剤を大量散布されたベトナムなどでは戦後、死産や流産、生まれても水頭症や無頭症、四肢の異常など体に障害を持つ子供が多くなったことが知られている。今はほとんど報じられてないが、ホーチミン市のベトちゃん、ドクちゃんはいっとき、日本の新聞やテレビをよく占めていたものだ。

ちょうど、22日の日経書評欄で紹介されていた本をこれから読もうとしていたところだった。

これが日経で紹介されているというのがある種の皮肉でもあるのだが、それはともかく日経に載った書評によれば、

 著者はフランスのジャーナリスト。ドキュメンタリー映像作家で、自身が作った3作品に期せずしてモンサントの名前が出てきたことが、この本を著すきっかけとなった。同社への取材は拒否されるが、訴状や内部書類、報告書、学術書、インタビューなどで迫っていく。そのさまは、さながらスパイ映画のようにエキサイティングで、モンサントが生物特許を武器に「世界の食料を支配」しようとしていると警鐘を鳴らす。

という。原発や環境問題について今発言している日本のジャーナリストたちが、同様の本を果たして書けるだろうか。えてして感情論、抽象論、理想論になりがちなのは、もうほぼ日本人の特質なのだろうか。3.11を経験したはずの今の日本の「ジャーナリスト」たちなのに、原発に関しては「東京に原発を! (集英社文庫)」を超えるものはまだ出てきていない気がする。

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