ミシェルの滞在費、1泊で2900万円

3月に日本を訪れた後、カンボジアを訪問したアメリカのミシェル・オバマ大統領夫人。「女子教育を世界で推進するためのイニシアティブ」のためとして、2つのイベントに出て計33分だけ話しただけという1泊2日の滞在期間中、24万2500ドル(約2900万円)もかけたという。

Michelle Obama’s two-day hotel stay in Cambodia cost taxpayers $242,500 – for two official events that took a total of 33 minutes(Daily Mail、2015年3月31日)

彼女が仕事をした時間で割ると、1分あたり7348ドル(約88万円)かかった計算になるとか。この33分のうち、高校で女子生徒と話をしたのが21分、残り12分は彼女が宿泊した「Sofitel Angkor Phokeethra Golf and Spa Resort in Siem Reap」で好都合にも開かれた平和部隊の研修でのスピーチだった。つまり、彼女は約3000万円をかけた旅行で、これだけのことしかしていなかった、とイギリスの新聞が報じたということだ。

しかも米政府は宿泊先のホテルで85の部屋を14泊分も予約していたことが分かり、Daily Mailは、

The State Department ruled on March 3 that (中略) the ‘unusual and compelling urgency’ of the first lady’s travel justified a no-bid contract to the Sofitel resort.

ざっくり訳:米国務省は3日、ファーストレディーの外遊が「通常時とは異なり急迫した必要性があた」ため、(彼女が宿泊した)ソフィテル・リゾートとの契約も入札は行わないと決めた。

と明らかにしている。ミシェルの日本、カンボジア訪問がいかに急ごしらえで、しかもまずはあまり必要性のなかったものかよく分かる。

こんなミシェルの訪問をありがたがって、朝日新聞は「書面インタビュー」やアメリカ総局長による「魅せる、大統領夫人 時代に働きかける存在」などという記事を大々的に扱った。

先日、読売新聞がオバマ大統領の書面インタビューを取っていたから、朝日の歯ぎしりが聞こえてくるようだが、しかし大統領だからこそ「書面」インタビューでもまあOKなのであって、大統領夫人で書面インタビューを取って喜んだ例をこれまで見たことがない。また、読んでいる方が赤面するほどのあからさまなお追従記事を書いて、この総局長は恥ずかしくないのだろうか。「ジャーナリスト」としての矜持を忘れたのだろうか。

今回はむしろ、日ごろからゴシップネタが多くて一段格下に見られている英Daily Mailの方がよっぽどジャーナリスティックな仕事をしたと言える。

いくつもの問題が重なって苦しい朝日だが、その根幹にあるのは、「ミシェルの書面インタビューを取れました」と総局長が言ってきても「だから何なんだ」とも、それを手柄にしたい総局長が臆面もない恥ずかしい原稿を出してきても「こんなもの載せられるか」とも言えなかった、社内の官僚主義にあるのは間違いない。

ジャーナリズムの根幹は、健全な猜疑心。多くの問題が起き、反省し、改善しているはずの朝日の最近の紙面で、よもやこれほどまでの紙面を見るとは思わなかった。

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