ベトナム人の怒り

ベトナムといえば中国と同じく共産党が一党独裁をしく国。当然、メディアもその「指導下」にある。そんなベトナムだが、珍しく国民からメディア批判が噴出している。

Vietnam Media Draws Ire for Not Probing Ex-party Chief’s Riches(VOA、2015年3月2日)

共産党の前トップ、ノン・ドク・マインの自宅内の写真が2月にオンラインで公開され、その後、すぐ削除された。そこに写っていたものは、

Manh sitting on a golden throne-like chair, elaborately carved with dragon heads for arms.

ざっくり訳:マインは黄金の玉座のような椅子に座っており、ひじかけには入念に刻み込まれた龍の頭があしらわれていた。

この写真に付けられたキャプションを見ると、どうやらTien Phong(ティエンフォン、先鋒の意)紙が掲載したもののようだ。確かにキンキラキンで床は大理石とみられる豪華な印象を与える。この写真に対し、VOAのフェイスブックページなどには「許せない」などのコメントが寄せられているらしい。

ベトナムには主要紙でも700あるらしいが、そのすべてがこの「問題」に沈黙。それは当然、「There are over 700 mainstream newspapers in Vietnam, but in fact the Communist Party acts as a sole editor-in-chief」だからだ。それにしても、まずいと思ってすぐに写真をひっこめたり、全メディアに沈黙を強いたり、反対にネットでは市民の生の声が許されたりするなど、ある意味、極めてまっとうで分かりやすい状況となっている。

翻って日本の状況はどうだ。NHKを見るが良い。大したニュース性もないのに、国会や政治の話になると長々と時間を費やす愚かさ。各党の反応は測ったかのように同じ秒数が割り振られている。たとえ「いつもの反応」をする党であっても、一般社会ではほとんど無視されている政党であっても、まったく力もない政党であっても。

おためごかしと「公正」「平等」という建前のもと、実は何らジャーナリスティックな仕事をしない公共放送。放送という枠を超えて営利に走る仮想「公共放送」の浅ましさ。文脈を与えもせず、解説すらしない特派員の斜め横からのカットで語るコメントの浅薄さ。

分かりにくいだけにかえってたちの悪い冗談にもならない。政治家のためだけに「公正」であるNHKなのであれば、国民はベトナム人のようにもっと怒って良い。怒れない日本人、それは魂を抜かれた抜け殻にすぎない。風が吹けばその風のままに流される枯れ草にすぎない。火に投げ込まれればたちまちもえつきてしまう木っ端にすぎない。そんなものであるために、あなたはこの世に生を受けたのだろうか。

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