タイ軍政、混乱したメッセージを発出

軍事政権であるがゆえに諸外国からは厳しい目で見られるタイのプラユット政権。元がPR戦略など考えもしない軍人だから仕方ないとはいえ、対外的なイメージ向上に最も死活的な総選挙(=民政移管)の期日について、混乱したメッセージを出している。極めてまずい対外戦略だ。

プラユット首相は4日、「If everything goes according to our plan at the start of next year there will be a new general election」と述べ、選挙は来年1月にも行われると表明した。

Thai PM says democracy roadmap on schedule, poll early next year(ロイター、2015年2月4日)

もちろんプラユットがいつだと正確な日付を出したわけではないが、ロイター電によると、

Prayuth did not give an exact date, but deputies have previously stated an election would be held by February 2016 at the earliest.

ざっくり訳。プラユットは日程を示したわけではないが、閣僚らはこれまで、総選挙は早くても来年2月以降になると発言していた。

つまり、この日のプラユットは、「2月よりは早く、1月にできる」と表明したことになる。

 

これを念押ししたのがVisanu副首相。翌5日に「来年1月には実施できる」と明らかにした。

Dr Visanu : Election possible next January(Thai PBS、2015年2月5日)

もちろんボスが言ったことだから曲げるわけにはいかず、しかしこの正副首相の発言で、この時点では「総選挙は来年1月」でほぼ確定したと見ることができる。

しかし6日になって、当のプラユットが、8日からの訪日を前に日本メディアと会見、「年末には可能だ」と明らかにし、自分の言葉さえ否定した形となった。

年末にも総選挙=邦人記者団と初会見-タイ暫定首相(時事、2015年2月6日)

もちろん、どうしても支持を取り付けたい日本への訪日を前に、日本メディア、つまり日本政府に対してのリップサービスという面もあるだろう。なんとか見出しのつく記事を書きたい日本メディアから誘導質問を受けた可能性もあるだろう。ただ、2月だ、いや1月だと予定を変更してさらに「12月だ」というのは、「総選挙を早くやろうとしているのだな」という肯定的な見方というよりはむしろ、「予定すらきっちりたてられないのか」という否定的な見方の方が大きくなる恐れの方が強い。

各記事の中でも、「国内の治安情勢による」とか「関連法規が」とか散々留保をつけているから、実際は2月どころか3月以降にさえずれこむ可能性のほうが高いが、まあそこは結果を見るしかない。

一方で、プラユットが本当に「12月総選挙」を明言したのなら世界的には大きなニュースになるはずなのだが、英語メディアではほとんど黙殺されている。なぜなら、報じたのが日本語メディアだからだ。対世界的な発信力が悲しいながらなかったということだ。数少ない中で、Nikkei Aisan Reviewが英語でこのニュースを伝えているが、経済に偏ってしまい、フォーカスがぼやけてしまった。見出しにもフォーカスのボケが反映されている。

Thailand’s Prayuth aims for bullet trains, election(2015年2月7日)

ああ悲しいかな、日本メディア。

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