タイで新憲法公布、各紙の伝え方

タイで6日、新憲法が公布・施行された。各紙の伝え方は以下の通り。

読売:タイ 来年にも総選挙 新憲法公布 軍政の影響力残る 国際面3段、648字

朝日:タイの新憲法施行 国王の権限強化、民主化後退 国際面3段(トップ)1546字

毎日:新憲法が成立 国王署名 民政復帰は大幅遅れ 国際面2段、312字

時事:タイ、新憲法を公布=総選挙が次の焦点 304字

日経:タイ新憲法ようやく施行 修正経て国王の権限強く  1010字

産経:7日付朝刊になし

朝日と日経が国王の権限強化を見出しに取ったのが少し違うが、民政復帰への遅れや今後の総選挙実施が焦点とする視点そのものは同工異曲だ。

従って、それ以外の情報源を探すことになる。

たとえば、地元紙の英字版を見ると、こういった記事がある。

The devil in the details: Thailand’s new constitution in a nutshell(Prachatai English, April 9, 2017)

ご丁寧に、独自に英語へ全訳した全文も提供している。記事を読むと、「軍事政権に絶対的権力」「ほぼ改憲不可能」「総選挙で選ばれた手足を縛られた状態」などとなっており、どれほど非民主的な憲法であるかが事実を持って語られている。

軍事政権下、しかも反対派を重罪の「不敬罪」で摘発することが常態化しているタイにあって、地元紙が、英語版でとはいえここまで軍政批判するにはかなりの勇気がいる。一方で、日本の新聞が報じている「国王権限強化」には一切触れていないのは、「不敬罪」による弾圧の可能性もあるためだ。

タイ憲政史上、20番目となるこの憲法を覆すには、次のクーデターを起こすしかないことになる。つまり、本来、民政移管のためのこの憲法は、民政移管ではなく次の政変を準備しているということになる。

少しずつ憲法を改正するのではなく、都合が悪ければいったん打ち捨てて一から作り直す作業を繰り返すタイ。雨季の洪水のある国ならではの政治感なのかもしれない。

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