カンボジアのフン・セン首相と、野党党首のサム・リャンシーが、ASEAN首脳会議が開かれるクアラルンプールで、マレーシア在住カンボジア人のためのレセプションを共同で開くことになった。
Hun Sen, Rainsy Host Joint Event Abroad(Cambodia Daily、2015年4月25日)
フン・センといえば、クメール・ルージュ崩壊以後、国の中枢に居続け、世界最長在任を誇る政治指導者とも言われる。つまりカンボジアでは半ば独裁的な地歩を築いているともいえる。一方のサム・リャンシーは折々にその権勢に挑戦してきてはいたが、身に危険が及びそうになるとすぐフランスに逃げてしまっていた。その2人が、意味的には軽いとはいえ、共同で何かをしようとするのだから、
The event, which Mr. Rainsy announced Thursday evening on his Facebook page, marks the first occasion that the longtime political rivals have ever hosted an event abroad together.
ざっくり訳:サム・リャンシーが自身のフェイスブックで23日夕に発表したこのイベントは、長い間ライバル関係にあった2人が海外で一緒にイベントを行う初の例となる。
フン・センは2013年の総選挙前にサム・リャンシーに恩赦を与え、それを受けてサム・リャンシーが帰国、選挙を行って野党が躍進したということがあった。その選挙に不正があったと野党側はかなり抗議したがそれも2014年10月にフン・センと手打ちした。つまりかつての敵対関係というよりは、互いが互いを利用し合う立場になりつつある、もしくはサム・リャンシーはフン・センに借りがあるとも言える。
いってみればカンボジア政治は総与党化したようなものであり、従って、異論の出番は少なくなる代わりに安定を手に入れることになる。
東南アジア大陸部を眺めると、ベトナムは共産党支配で盤石、カンボジアは総与党化、ミャンマーはテイン・セイン大統領が少数民族との停戦に合意など、総じて安定化の方向にある。ひとりタイのみがクーデターによる暫定政権と取り残された格好だ。
経済成長に政治的安定が必要だとしたら、タイもうかうかしていられない。馬鹿にしていたミャンマーやカンボジアに気付いたら追い越されていたという悪夢が、このままでは現実化しかねない。