コーカンをもう忘れた日本メディア

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ミャンマーのコーカン地域では、依然としてミャンマー軍と少数民族武装勢力、ミャンマー軍と中国軍のにらみ合いが続いている。問題は何も進展せず、目に見える明白な事態も起きていない。こうした時、テレビはなかなかニュースを報じることができない。映像の力に頼らずに済む新聞はそうではないのだが、それでも、もう何もなかったかのようにぷっつりと記事が途絶えた。

しかし米系では、たとえば経済ニュースが専門の社でさえこんな記事を流している。

Myanmar blames bombing in China on ‘ethnic group(Bloomburg、2015年3月16日)

ミャンマー軍機が中国側を爆撃したという事件について、ミャンマー側が責任を否定、それは少数民族側の仕業だといったという内容だ。ただ読んでみると、そのくだりはむしろ記事のきっかけに過ぎず、大半はこれまでの経緯や背景の説明となっている。こういうやり方もある。読者を教育するという意味で。

とはいえ、いつも米系メディアをほめているので、好ましくない記事も紹介。

Why China can’t get too angry at Burma for dropping bombs(Washington Post、2015年3月17日)

バイラル・メディアに影響されすぎたのか、見出しは魅力的だが記事の内容は乏しい典型例。羊頭狗肉。いつもなら官製愛国心を鼓舞して、近隣国を責め立てる中国がなぜ今回、ミャンマーに対しては強硬姿勢に出ず、むしろSNSなどで燃え上がるミャンマー批判の火消しに回っているか、という内容かと思えば、SNSの反応だとか、それを政府がいかに押さえこんでいるか、という話ばかりで、肝心の「なぜ」に対する答えが出てこない。

「なぜ」にかかわる記述としては、

  • The surprising restraint highlights the delicate nature of China’s relationship these days with Burma. China has been trying to preserve and rebuild its ties with Burma in recent years amid that country’s transition from an authoritarian, military-run government and its surprising overtures to the West.
  • Burma remains a large importer of Chinese weapons. Many of its biggest projects are Chinese-backed or owned — an arrangement that allows China to secure energy and raw materials that are crucial to sustaining its ever-expanding economy.

などは出てくるが概論に過ぎず、説得力もない。

2点目を言うなら、アンダマン海からミャンマーを通って雲南へ抜ける石油・天然ガスパイプラインがいかに中国のエネルギー安保に重要かをきちんと伝えないといけないはずだが、記事はそこまで及ばない。

ワシントン・ポストの北京駐在記者が書いてもまあ、この程度だ。それでも言えるのは、記事がないよりはいいということ。この記事でも中国政府がSNSの書き込みを消して回っているという事実は伝えられている。日本の新聞の記事でそこに触れたものをまだ読んではいない。不十分でも、あれば無よりは全然ましだ。0と1とではまったく違うのだから。

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